社会政策学会大会 開催校報告



2006年度秋季(第113回)大会を終えて(開催校報告)

社会政策学会第113回大会共通論題会場

 2006年度の秋季(第113回)大会は、10月21〜22日に大分大学で開催された。両日とも晴天に恵まれ、汗ばむほどの気候となった。大会には246名の参加があり、当初のスケジュール通りに順調に進んだ。大会の準備過程から当日までの開催校の活動について報告したい。

1.実行委員会の体制

 第113回大会を大分大学で開催することは、3年ほど前に決まっていた。しかし、実際に準備をはじめたのは、前年の9月であった。2005年9月7日に第1回の実行委員会を開催し、実行委員会の組織体制や役割分担を決めた。本学には5名の学会員がいるが、実行委員長を阿部誠(経済学部)、事務局長に石井まこと(同)、そして会計担当を幸光善(同)とすることにし、実行委員として藤原直樹(同)と垣田裕介(福祉社会科学研究科)が加わった。
また、11月に開かれた2回目の実行委員会において、他の学会の日程なども勘案し、第113回大会の日程を10月21日〜22日に決めるとともに、会場として本学経済学部棟を利用することにした。その後実行委員会は、決算をまとめた2006年11月の会議まで全部で10回開かれ、さまざまな点について協議し、準備を進めた。もっとも、本学は規模が小さいうえ、学会員はすべて経済学部棟に研究室をもち、毎日のように顔をあわせているため、「実行委員会」と銘打たずとも、相談する体制をとることができた。これは準備を進める上で好都合であった。

2.大会プログラムの印刷・発送

大会プログラムは、基本的に企画委員会で作成し、実行委員会で印刷、発送することになっている。今回も、実行委員会で印刷会社数社から見積りをとったところ、見積額にはかなりの差があった。そのなかで比較的安い見積額を提示した会社を選ぶことにしたが、発注する際に、印刷会社が発送作業まで請け負うことがわかり、かつ郵送料を含めたプログラム印刷・発送の見積りが予算額を大きく下回ったため、印刷から発送まで同社に一括して発注することにした。
実行委員会では、秋季大会企画委員会から8月23日にプログラムのファイルを受け取り、会場案内図や連絡事項等を加えて原稿を作成し、8月25日に印刷所に渡した。そして、校正を行った後、9月5日には発送されたが、これはほぼ予定した通りの日程であった。

3.会員の参加申し込み状況

 本学は、東京等の大都市から距離があるうえ、大分市街地からも10キロほど離れており、従来交通アクセスがよくなかった。しかし、数年前に豊肥本線に「大分大学前駅」が開設されて以来、大分駅からのアクセスはかなり改善された。このため、今回の学会開催にあたっては、参加者にJR利用を促した。都会のような便利な状況にはないにしても、駅を出て道を渡れば大学構内に入るので、大学へのアクセスにはほとんど問題なかったと思われる。ただ、会場の経済学部棟までは大分大学前駅から上り坂を10分弱歩かねばならないため、参加者のなかには少し負担を感じた方もいたかもしれない。
 本学会では事前の参加申し込みが定着しているが、今回、参加費を前納された会員は、171名であった。返信葉書での参加申し込みも同程度であった。事前の参加申込みの出足は遅く、申込み者数が予想を下回ったため、直前になって参加見込み数を230〜240人から200人程度に下方修正し、準備を進めた。しかし、大会当日の参加申し込み数は、会員で56人、非会員が24人と予想を上回った。その結果、実際の参加者数は両日をあわせて246名(会員222名、非会員24名)にのぼった。参加者が増えることは開催校としてうれしいことだが、準備の都合からいえば、できるだけ事前に申し込みをしていだきたいというのが率直なところである。

4.参加者の受付

 受付は、会場の入り口近くに設け、実行委員2名に加えて大学院生のアルバイト等6名で対応した。事前に参加費等を支払っていた方が多かったこともあり、受付は全体としてスムーズにいったと思う。ただ、初日の朝には、受付がやや混雑し、行列ができた時間帯もあった。JRの電車がほぼ30分おきなので、参加者がまとまって駅に着き、受付へ一団となって来られたため、時間帯によって混雑が生じたのは、やむを得ないことであった。ただ、これも土曜朝の2〜3回だけのことだったのでお許しいだきたい。
 今回は、受付の脇に書店の展示コーナーを設け、ここに例年通り5社が出展された。

5.大会の会場

 今回の大会では、会場を経済学部棟だけでまかなった。この建物は1960年末に完成した古いもので、私大のような立派な建物でも、また風格ある建物でもないが、教室にはパソコン、プロジェクター、マイク等の設備がそろっており、大会会場として問題はない。ただ、入り口が前方にある教室が多いため、分科会中の出入りにはやや難があったかもしれない。
 一方、最近は秋季大会の規模が大きくなっており、分科会の数次第で多くの教室が必要となる可能性もあったが、最近の秋季大会での分科会の開設状況を調べたところ、経済学部の教室でまかなえると思われた。結果的には、小教室も含めてすべての教室・演習室を使用することになったが、分科会、諸会議をひとつの建物内でやることができた。これは、準備するうえでも、また当日の運営面でも好都合であった。とくに事務局員やアルバイトの移動範囲は比較的小さかったため、相互の連絡も取りやすく、動きやすかった。

6.分科会の進行

 今回の大会で分科会は、自由論題が6つ、テーマ別分科会が7つ開かれた。この数は、本学部の教室を使って分科会を開催できる、ぎりぎりの数でもあった。分科会はパワーポイントの利用を含めておおむね順調に進み、熱心な議論も多かったが、一部で参加者の少ない分科会もみうけられた。各会場には、プロジェクター等の使い方がわかる学生を2名づつ配置した。
パワーポイントについては、2日前になって、教室にあるパソコンのソフトが2002年バージョンであることが判明した。これでは最新バージョンで持ってこられた方に対応できない恐れがあったため、急遽、猿田秋季大会企画委員長を通じて、報告者に2002バージョンで保存したデータを持ってきていただくようお願いした。しかし、その後、本学部助手の努力で、全教室のパソコンに2003年バージョンを入れることができたため、バージョンの違いによる不具合は生じなかった。
 ただ、報告者のなかに、特別のソフトで作成されたコンテンツを持ってこられた方がいたが、対応ソフトがなく、報告の際に開くことができなかった。標準的なソフトであれば実行委員会で用意できるが、特別なソフトを利用された場合にはパソコンを持ってこられないと対応できない。
一方、フルペーパーは、当時持ち込みの方も少なくなかったとはいえ、全体としてはきちんと用意されており、問題はなかった。ただ、労働組合部会では、報告者から追加資料、それもかなりの量のものの印刷を求められた。当日に開催校で印刷するのは事務局の負担が大きいため、本学会では対応しないことになっていたが、報告者が会場係の学生に直接印刷を依頼された。間に入った学生も困っていたため、結局は事務局で印刷することにした。今後は、こうしたことはなくしていただくよう会員のご協力をお願いしたい。とくに、会場係の学生に印刷を依頼されても、学生ではどう対応してよいかわからない。アルバイト学生に余計な負担をさせないという点にもご配慮いただきたい。

7.共通論題の進行

共通論題は慣例にしたがって日曜日に設定した。地方の場合、日曜日には参加者が減ることも予想されたので、参加者数には若干危惧をいだいた。日曜日の朝の参加者はやや少なかったものの、昼前には120名ほどになった。しかし、午後に入ると順次帰る方が増えたため、出席者は減り、とくに交通機関の関係もあって休憩後は出席者は少なくなってしまったが、これはやむを得ないであろう。最終的に討論は4時半まで続いたが、最後まで残ったのは30名ほどで、やや寂しかった。しかし、全体として、興味深い共通論題であったと思う。

8.懇親会

 懇親会は、おそらく大会の印象を左右するもっとも重要な要素であり、開催校にとっての「最重要課題」といえよう。最近の地方大会では、学外で開くことも増えており、今回も実行委員会では当初ホテル等の利用を検討した。しかし、移動や費用等の点で困難があると思われたので、断念した。そして、会場としては本学の厚生施設(生協食堂)を利用する代わりに、中身の充実をはかることにした。
大分は海の幸が豊富なところであり、「関あじ」「関さば」がとくに有名なので、懇親会では、できるだけ新鮮な魚を味わっていただくことにした。そこで、目の前で魚をさばき、新鮮な刺身や鮨を提供してくれるケータリング業者を探し、関あじ、関さばを含めた刺身や鮨等を注文した。それ以外の料理については、会場利用の関係もあって一部を生協に発注したほか、別の仕出し屋にも注文した。その結果、懇親会には4つの業者が入ったことになる。料理はすべて実行委員会で事前に試食し、味を確認した上で発注しており、実行委員の「舌」が試されたともいえよう。一方、お酒は日本酒、焼酎ともに地元のものを取り揃えた。とくに地元でも入手しにくい焼酎「耶馬美人」を提供するよう努力した。
 一方、生協食堂は施設としては貧弱である。そこで、ただ広いだけのホールを少しでも見栄えよくするために、パネルを持ち込んで「仕切り」をつくったり、テーブル配置を工夫したりした。また、会場にはステージや音響設備がないため、レンタルで揃えた。わずかなスピーチのために安くないレンタル料を払うのに若干躊躇したが、かつて生協食堂で開かれた懇親会で聞こえないスピーチを聞かされた覚えもあるので、音響設備は準備したほうがよいと考えた。
 懇親会は、実行委員長の挨拶に続いて、本学の羽野学長が歓迎の挨拶を申し上げた。その後、武川代表幹事からご挨拶があり、本学名誉教授の清山卓郎会員による乾杯の発声で宴ははじまった。最後は、次回大会開催校を代表して森建資会員にご挨拶いただき、2時間余の懇親会は無事終わった。懇親会会場の設営やお酒のサービスなどに学生アルバイトが活躍した。
懇親会も当日申込者が少なくなく、参加者数は141名と予想を上回った。当日になっての申込みが増えたため、急遽料理の追加を依頼したが、仕入れの関係もあり、十分にはいかなかった。それでも、関あじ、関さばは、業者がかなりの数を市場からかき集めてくれたようである。

9.昼 食

本学の場合、大学周辺に飲食店がほとんどなく、弁当を買うことも不便なので、昼食はもっとも心配した点であった。とくに事前に弁当の注文を受付けても、実数がつかめるか心配であった。しかし、通常土曜・日曜は休業している生協が、学会当日に特別に営業してくれることになったので、生協を利用していただくことにした。問題は事前予約制にするかどうかということであったが、事前に予約していただいても、予約なしに当日来店した参加者にどう対応するかという問題もあったので、多少のリスクを生協に負ってもらうことにして、事前予約なしというかたちで生協に引き受けてもらった。結果的には、昼食はスムーズにいったと思う。とくに土曜日は、本学会参加者のほかに、本学学生や他の行事の参加者も生協に昼食をとりにきたため、予想を上回る300食が出たそうで、生協はてんてこ舞いであった。当日、在庫の食材をすべて提供したため、懇親会での追加料理が難しくなったとも聞いている。一方、日曜日は、本学を会場にして大規模な試験が行われたので、会員以外の方が生協に来店し、昼食が混乱することが懸念されたが、試験は午前中で終わったため、問題は生じなかった。

10.エクスカーション

今大会では、大会翌日の月曜日に新日本製鉄大分製鉄所の見学を組んだ。大分市は、新日鉄の立地によって重化学工業都市として大きく発展したことから、大分で開催する学会としては、ここが見学先としてふさわしいと考えた。とくに大分市街地から近く、移動に時間を要しないため、見学が午前中で終わるというのも、遠方まで帰られる会員のことを考えると適切と思われた。ただ、工場見学は参加者数の予想が難しいことから、貸し切りバスを利用せずに、フレキシブルに対応できるタクシー等を利用することにした。当日は20名の会員が参加され、タクシーと大分大学の会員の自家用車で大分製鉄所に向かった。10時から12時過ぎまで大分製鉄所を見学し、短時間であったが質問の時間もとれた。12時過ぎにエクスカーションを終え、今大会の全日程を終了した。

11.会 計

 大会開催あたり学会本部から実行委員会に大会開催費として100万円が配分される。実行委員会では、これですべての準備を進めることになるが、問題は会場費の支払いであった。本学には、外部団体が教室等を利用する場合、会場費を徴収するという規定があり、学会をどう取り扱うかが問題であった。財務当局は、学会開催についても会場費を徴収するという方針であったが、規定の解釈を議論した結果、本学の教育研究に直接関係すると判断されれば、不徴収とするという見解が示された。このため、本学部での社会政策学会開催の「意義」について、学会員連名で文書をまとめ、教授会の理解を得て、会場費を不徴収とした。
 当初、会場費を負担するとやや赤字になる可能性があったが、会場費を負担せずにすんだため、支出を抑えることができた。また、プログラムの印刷・郵送費等は、予算額を大きく下回った。とくに郵送費の節約が大きかった。また、今回返信ハガキについては、「受取人払い」としたため、返信されなかった会員のハガキ代を節約できた。一方、大分県の賃金水準は低いため、学生アルバイトやその他の諸経費も、東京などより若干低く抑えることができた。
 これらの経費節減に加えて、大分大学経済学部から5万円の学会開催補助費を受け取ったため、最終的には約25万円の黒字決算となった。黒字が生じた主な要因は、会場費を負担しなかったことであり、今後の大会でも会場費を負担するかどうかによって、決算には大きな違いが生じると思われる。なお、黒字の一部は本学に寄付し、残額を本部会計に戻した。

おわりに

 大分大学は、大都市から離れ、交通面でも不便なところに立地しているだけに、大きな学会の開催には心理的なカベがある。もっとも心配されたのは、参加者が少ないのではないかということであった。しかし、今回250名ちかい参加者があり、地理的な問題は大きな障壁にはならないと感じられた。
 一方、本大会では、会場の配置に代表されるようなコンパクトな大会運営を心がけたが、それはある程度うまくいったと思われる。開催校の負担は小さくないものの、運営を工夫することで、大会開催への過大な負担感を減じることができるのではないかと思われる。また、今大会を通じて、アルバイトの学生が大きな力を発揮していたのも印象的であり、その力に助けられた部分も大きかった。
 いずれにしても、大会が成果をあげて終わったことを実行委員会としてたいへんうれしく感じている。幹事会や秋季大会企画委員会をはじめとする学会員のご協力に感謝したい。

〔阿部誠〕