社会政策学会大会 開催校報告



第112回大会開催校報告

社会政策学会第112回大会会場:立教大学正門前

 社会政策学会第112回大会は、2006年6月3日(土)・4日(日)の両日、立教大学池袋キャンパスで開催された。2日間で416名(会員352名、非会員74名)が参加された(参考:第110回専修大学大会会員303名、非会員65名)。参加者が400名を超え、学会史上最大の参加者数となったと思われる。天候にも恵まれ、スケジュール通りに進行できた。

1. 実行委員会

 2005年4月5日第1回の実行委員会を開催し、実行委員長井上雅雄(経済学部)、事務局長菅沼隆(経済学部)を確認した。同年5月の第110回大会では、専修大学の運営体制について、できうる限り観察し、必要に応じて写真撮影を行い、情報を収集した。
 7月23日に第2回実行委員会を開催し、役割分担を決めた。事務局長補佐湯澤直美(コミュニティ福祉学部)、会計菅沼、会場設営名和隆央(経済学部)、懇親会・弁当小松善雄(経済学部)(懇親会は後に庄司に変更)、託児室庄司洋子(社会学部)。なお、鹿生治行会員(山形大学、前立教経済院生)の協力を得たほか、2006年4月からは経済学部助手に着任した前浦穂高が事務局員として従事した。
 その後、10月29日に第3回実行委員会、12月10日第4回実行委員会、2006年3月29日第5回実行委員会、5月27日第6回実行委員会を開催した。
 また、7月29日に専修大学にて、大会事務局の引継ぎをおこなった。浅見和彦事務局長をはじめ、兵頭淳史会員、内山哲朗会員から懇切丁寧な説明と助言をいただき、使用したデジタルファイルを受け取った。これらは事務局運営の上で有益であった。

2. 会場

社会政策学会第112回大会受付  立教大学はキャンパスが狭いばかりではなく、土曜日の授業も含めて日中(1時限から5時限まで)の教室稼働率が平均90%ときわめて高いため、大会会場の確保に少なからず困難が予想された。また近年、学会の開催も激増していることもあって、他学会との競合も想定されたから、会場の確保については、大会開催の2年前から準備を進めた。大学庶務課と連絡をとり、6月3・4日のみ学内行事が少ないであろうことが確認されたため、この日に学会を開催したい旨を口頭で申し込んだ。後に別の学会が同じ日の開催を希望したが、社会政策学会が優先的に使用できることになった。だが、教室使用については、1授業、2学内行事、3学外行事、という優先順位が大学で設定されており、しかも実際に学会で当日使用可能な教室が判明するのは、教務事務の関係上2006年2月末(大会開催の3ヶ月前)になってからと、開催を申し込んだものの教室の確保を保障されたわけではなかった。
 2005年6月の第1土曜日(大会開催の1年前)の教室使用状況をチェックしたところ、ほとんどすべての教室がいずれかの時間帯に授業・学内行事で使用されていることが判明した。したがって土曜日に分科会を開催するとすれば、会場が分散し、参加者の方に多大な不便をおかけすることが確実となった。このため異例ではあるが、土曜日に共通論題、日曜日に分科会を開催することを決定した。
 2006年2月末に使用できる教室が確定したが、共通論題の会場として使用できる500人以上収容の教室3つは、いずれも土曜日に授業で使用されることが分かった。そのうちの1教室を授業を担当する教員に依頼し、当日のみ講堂(1,300人)に移動してもらい、共通論題会場を確保した。分科会会場については、大会2日目の日曜日としたことで、教室確保が容易となり、隣接する2つの建物(7・8号館)に会場を集中させることによって、参加者の利便性を高めることができた。ただ、大会初日は、受付周辺で休憩室に充当できる教室が確保できなかったために、参加者の方にご不便をかけてしまうことになった。

3. 大会プログラムの編集と印刷・発送

 2006年3月上旬に春季企画委員会よりプログラムのファイルを受領した。事務局は教室・会議室の配当を行い、案内・地図などを挿入し、印刷用の完全版下を作成し、印刷業者に印刷を依頼した(印刷数 プログラム1,300、大会用封筒2,000、振込用紙1,300)。
 プログラムの印刷手配と発送も事務局の業務であった。3つの印刷業者から見積もりを取り、最も安価な業者を選定した。見積価格に8万円もの差があった。また、第110回大会の支出を参照し、すべての項目でそれを下回ることを目指した。プログラムの発送は、専門業者に依頼することにし、事前に見積もりをとった。業者はパンフレットの重量を勘案し、最も安価なプランを提示してくれた。会員名簿を発送業者に手渡すため、事前に個人情報保護について契約を結び、情報が外部に漏れないように細心の注意をはらった。なお、海外在住者9名についてもプログラムを送ったが、そのために超過料金が発生した。
 非会員の報告者に対し、事前にプログラムを郵送する方法が確立されておらず、多少の混乱を招いた。座長宛にプログラムを郵送するか、学会ホームページに掲載されたプログラムをダウンロードしてもらうか、のいずれかの方法で対処した。この点は、今後の課題であると思われる。

4. 共通論題

社会政策学会第112回共通論題会場

 共通論題「『格差社会』のゆくえ」は、午前中から参加者が多く、最大650人収容の大教室は午前の段階で適度に座席が埋まる状況となった。特に、午前中に当日申込者数が多かったから、午後も同じペースで増えると、準備した約210部の当日参加者用資料が払底する恐れが出てきた。このため昼の幹事会で善後策について検討していただき、資料がなくなったことを了解した上で、参加料を払って参加してもらうことにした。しかし、午後になり当日申込者は予想ほど増大せず、資料が不足する事態は避けられた。共通論題の参加者は午後も漸増し、中途退席する人はほとんどなく、会場はほぼ満席という印象を受けた。共通論題終了時にはおそらく400名程度が会場にいたと思われる。
 非会員の共通論題報告者のフルペーパーは、開催校が印刷することとなっているが、1人の非会員報告者のペーパーが大会前日にも完成していない事態が発生した。このため急遽、連絡を取りレジュメを一枚提出してもらい、開催校で印刷し、参加者用の封筒に詰めた。フルペーパーについては、大会当日に当該報告者が持参され、会場で配布した結果、共通論題でフルペーパーがないという事態は避けられた。社会政策学会第112回大会玉井金五氏報告
 共通論題の質問票を座長・報告者分コピーする作業については、昼休み提出分は、やや時間を要したものの、昼休みの打合せ中に間に合った。だが、午後の報告終了後に提出された質問票については、質問が多数寄せられたこと、休憩時間が短かったことなどによって、総括討論開始に間に合わなかった。このため総括討論開始後に質問票がパネラーに配布されることになり、討論に十分に生かすことができなかった。パネラーの皆さんは戸惑い、質問した参加者は自分の質問に対する答えが得られない事態となり、混乱を招いた。この点については、今後、コピー体制を迅速にする手だてだけでなく、午後の質問票の提出についてルールを定めるなど、検討する必要があると思われる。

社会政策学会第112回大会分科会ストーン教授報告

5. 分科会

 21分科会7教室を確保したが(昨年16分科会6教室)、教室の選定に際してはすべての教室においてパワーポイントを使用できることを最優先にした。フルペーパーの事前提出については、締め切りの5月28日の段階で45本中20本が到着していた。到着状況について、分科会座長・春季企画委員の皆様にお伝えしたため、翌週に多数到着し、結果として大会前日までに80%以上が到着した。なお、一部の若手会員は、5月28日までにフルペーパーを提出できない場合は、報告出来なくなると誤解されていたようである。

6. 郵便振替による前納の状況、参加者区分について

 これまでの開催校の意見等を徴して、今回は出欠はがきによる参加状況の把握をとりやめ、郵便振替による参加費の振込によって参加状況を把握することとした。したがって、参加者の出席分科会等の一覧を配布しなかったので、不満を抱かれた会員もいるかと思われるが、これについてはコストと事務作業量の削減のために甘受していただきたいと思われる。
 5月15日の振込み締切の段階で振込者数が232名(昨年170名)となり、大幅に増えた。締切後も振込者数は増大し、最終的に291名に達した(昨年出欠ハガキ255名)。最終的な参加者数については、冒頭に示した通りである。昨年同様、大会直前に振り込んだ会員が若干名おり、事務局は大変混乱した。中には大会前日に振り込み、受付名簿に名前がないことに怒られた会員もいたが、それは到底対応できないものであることを了解していただきたいと思う。
 参加者名簿・領収書・封筒の宛名シールの作成などはすべて事務局の手作業で行った。これにより大幅なコスト節減が図られた。

社会政策学会第112回大会、井上実行委員長自らお弁当を配布

7. 昼食・懇親会

 前納の場合、大会参加費に加えて懇親会費も500円割引とした。これにより前納者291名と大幅に増大した。
 弁当の手配については、大きな困難があった。すでに述べたように教室の不足から、大会初日、受付周辺に弁当を食べるための教室を確保することができないことが明らかとなったからである。会員にはやや不便をかけることになるが、キャンパス周辺には飲食店が多数あり、そこを利用していただくことにした。他方、大会2日目は、一般参加者にも弁当を手配することは可能ではあったが、初日と2日目で弁当の申込み条件を変えることは、今度は、別の混乱を招くのではないかという危惧があり、2日間とも一般参加者の方の弁当は準備しないことで統一した。
 しかし、今回は役員・委員の改選の期であり、参加申込締切の段階で、次期の役員・委員が内定していない会員が多数おられた。その会員は弁当申込みをすべきかどうかご本人も判断できず、迷われたと思われる。このため5月10日に各委員長・部会責任者に、委員になられる可能性のある方は弁当を事務局宛に申し込むように連絡をお願いしたが、十分に伝わったとはいえず、混乱を招いた。
 委員に手配した弁当については、大会初日、お茶がないという失態を招いた。急遽コンビニで調達したが、弁当と一緒に手渡すことができず、また数名の方には最終的に手渡しできなかった。大変ご迷惑をおかけして申し訳なく思っている。原因は業者との事前の確認不備であり、お詫びする次第である。
 お弁当の内容については、「値段の割に貧弱である」という苦情をいただいた。確かに、見た目はそうだったと思われる。だがいささかのエクスキューズを許してもらうと、初日は「地産地消」をテーマに、東京の田畑で収穫された新鮮な食材のみを使用したものであり、2日目は「有機食材」のみを使ったものであった。当初、弁当にメニューとテーマを添付する予定であったが、添付されなかった。このため「単なる弁当」とみなされてしまい、満足感を高めることができなかった。これも業者との最終確認ミスであり、我々の責任である。お詫び申し上げる。 社会政策学会第112回懇親会風景
 懇親会は学生食堂を使用した。事前申込は110名であった。これに当日会員13名、当日非会員20名、事務局6名の合計149名が参加した。懇親会は全体で若干の黒字となった。
 懇親会では、開催校から小西一雄経済学部長、学会代表として武川正吾新代表幹事が挨拶し、乾杯の挨拶を立教大学名誉教授の内藤則邦名誉会員からいただいた。懇親会の半ば、海外から招聘した3名のゲストの方に挨拶をいただいた。全体として、和やかな雰囲気のうちに終了した。

8. 会場設営と学生要員確保

 会場設営では、パワーポイント使用への対応に細心の注意を払った。パワーポイント使用者が激増しており、過去の大会で報告された不具合を防ぐために、その体制を整えることが最大の課題であった。各教室のPC操作卓に事前に訓練をした学生要員を配置するとともに、操作に詳しい院生を各建物に待機させ、トラブルの発生に備えた。結果として、パワーポイント使用に伴うトラブルは皆無であった。
 マイクに関するトラブルの回避にも努めた。通常授業よりもマイクを多く使うため、事前に大学の担当部局で調整と使用方法を確認した。大会前日に教室担当の学生要員を含め、マイクテストを行なった結果、大きなトラブルはなかった。報告されているトラブルは、共通論題の総括討論の際、フロア用のワイヤレスマイクの片方の音声が途中から途切れるというものであった。事前の点検で発見できなかった不具合であり、お詫び申し上げたい。
 学生要員の確保は困難を伴った。早い時期から実行委員のゼミ生に協力を要請していたが、土曜日は授業があること、既にアルバイト・サークルなど別の予定が入っていること、学会のイメージを抱けないこと、報酬が通常アルバイトよりも安いこと、などの理由で協力を表明する学生が少なかった。半ば「拝み倒す」ような強い態度で依頼するとともに、日給を増額することで、ようやく必要数を確保することができた。

9. 大会中の託児の件について

 2005年4月に立教大学に教職員・学生用の託児室「エンゼルルーム」が開設された。当初、これを利用する方向で大学に申し込んだ。これを受けて、大学では数ヶ月の検討を経て、学会による託児室の利用規定を作成した。その規定では、(1)大学と契約を結んでいるP社以外の利用は認められない、(2)土曜日に学内者の利用があった場合、学会の利用は認められない、(3)日曜日にP社に委託した利用のみ可というものであった。また、保育委託料は、一日につき最低で約5万円を要することが明らかになった。このためエンゼルルームの利用をいったん断念し、学外の託児サービスを利用する方途を探った。考えられるあらゆる可能性を追求したが、キャンパスから遠く離れていること(最も有望な保育園は線路の反対側の池袋東口であった)、開設時間が学会開催時間と合わせられないこと、利用料金が事前に確定しないこと、など様々な問題が明らかとなり、暗礁に乗り上げた(10月29日第3回実行委員会)。したがって再度、学内のエンゼルルームを利用する方途を探ることにした。なお、第4回実行委員会の際、実行委員4人でエンゼルルームを見学し、充実した設備、場所からみてエンゼルルームを利用することが最善であることを確認した。学内利用者の有無にかかわらず土曜日に学会で利用できるように大学と再度交渉することとし、他方、利用しやすい料金システムを設定するために、利用料を低額に抑え、保育委託料との差額を学会から補助がいただけないか、幹事会に検討をお願いした。1月の幹事会において、経緯を説明し、補助をもらう方向でおおかたの賛同を得、4月の幹事会に補助に関する案を開催校から提案することにした。大学には4月の幹事会に間に合うように、3月中に利用規程を作成するように協力を依頼した。立教大学の新しい提案は、(1)土曜日は学内者の利用があっても学会が利用できる、(2)土曜日に学内者の利用があった場合、委託契約料は立教大学が負担する、(3)日曜日の委託契約料は学会が負担する、(4)利用者負担は学内教職員の利用料金(1000円/時間)に準ずる、というものであった。これに基づき、事務局で学会の補助規定の案を策定し、4月の幹事会に提案し、了承を得た。その概要は(1)利用者の負担は半日につき4000円(1日8000円)を基準として設定、(2)委託契約料と利用料の差額を学会が補填する、というものであった。幹事会では、事故の際の学会が負うべき責任について疑義が提示されたが、通常の事故はP社が加入している保険でカバーされること、施設の不備による事故は大学の責任となり、学会それ自体が負うべき事故を具体的に想定することは困難である、ということで了解された。幹事会の支援に感謝したい。学内施設のエンゼルルームが利用できようになったことを、学会のメーリングリスト、ジェンダー部会メンバーに通知していただいた。
 実際の利用申請は大会2日目に1名あった。快適に利用していただいたと聞いている。P社からの請求額は49,680円であり、利用料8,000円との差額41,680円を学会に補填していただいた。託児室の利用については、準備に膨大な時間と多数の協力者の存在があった。このため利用実績が上がったことを喜んでいる。託児サービスの形式的な斡旋ではなく、利用しやすいサービス提供ができたと考える。だが、利用があるかどうかは直前まで不明という状況のもとで、大きな不安を抱えながら準備をせざるをえなかった。

10. 大会会計について

 学会本部より100万円、立教大学より学会開催援助金20万円をいただき、これでもって大会費用をまかなった。だが、参加人員の増大に対応して学生のアルバイト要員を増員したために、7万円ほどの赤字が発生した。このうち懇親会で4万5千円ほどの余剰が生じたので、これを補填し、残り2万5千円については学会本部から援助をいただくことになった。

11. 書店の出店

 書店の出店については、受付会場のスペースから算定し、おおよそ5〜6社が適当と考えた。幹事会と相談し、開催校が出店数を決定してよいということになったので、3月の時点で常連の5社(法律文化社、ミネルヴァ書房、お茶の水書房、明石書店、極東書店)に限定した。その後、数社から出店の申し込みが寄せられたが、スペースの関係からお断りした。受付会場の正面に出店できたためか、売上は良好であったとうかがっている。

12. 最後に

 開催校を経験しての感想を3点だけ述べておきたい。第1に、開催校の負担が当初予想したよりもはるかに大きかったことである。第2に、大学当局は必ずしも学会開催を歓迎していないことである。第3に、参加者数が予測できないことが、準備の上で最大の悩みであったことである。参加者数が多ければ、準備も充実させなければならなくなる。今回の大会は、複数の幹事から事前に「史上最大の参加者数になるのでは」と指摘されていた。だが、どの程度の参加者数になるかは、最終的に当日にならなければ分からない。そのような中で準備を進めることはリスクが大きいと感じた。
なお、大会会計で赤字が生じた際の扱いについて、総会で議論された。その結果、繰越金を取り崩す形で援助していただけることになった。学会に追加の負担を求めることになり、大変申し訳なく、会員の皆さま、幹事会の皆さまにお詫びを申し上げる。また、ご援助に心より感謝を申し上げたい。
ともあれ、小さなトラブルが少なからずあり、ご迷惑をおかけしたが、大きなトラブルは回避できたのではないかと思っている。幹事会、春季企画委員会はじめ会員各位のご協力に心から感謝したい。


〔文責:菅沼隆〕